磯俣総領事(大使)の挨拶(2020年新春:令和2年1月10日)

令和2年1月10日


 

  新年を迎え、皆さまのご健勝とご発展をお祈りしつつ、ご挨拶申し上げます。
 
   昨年日中両国間では、その前年の勢いを維持・発展させる形で、様々な交流が進みました。政府の間では、首脳レベルの往来を含めハイレベルの頻繁な往来や接触があり、直近の例を挙げれば、先月下旬の安倍総理の北京及び成都訪問は記憶に新しいところです。経済・ビジネス交流についても、例えば金融分野では、政府間の対話のみならず、中国政府による外資規制緩和等を受けての日中両国企業による新会社の設立もありましたし、11月の第2回国際輸入博には日本から多くの企業等が参加し、日本は第1回に続き出展者数で最大となりました。人的・文化交流の面でも、乃木坂46の皆さんや、米津玄師さんを含め数多の日本の人気アーチストの上海公演が相次いで行われたことは、ご存知のとおりです。
 
   日中両国の首脳により「日中新時代」を切り拓いていくとの決意が累次表明され、両国の関係各界が互恵的な実務協力や一層の国民交流を進めていく中で、この機会に一歩立ち止まって、今後の日中関係を考えるに際しての私なりの視点・視座を少しく共有させていただければと思います。一つ目は、「等身大」の相手を知ることの重要性です。我々は、往々にして既存の知識や経験を基にした固定観念にとらわれがちで、ややもすると必ずしも正確な理解に基づかないまま判断を下してしまいます。特に、中国の発展や変化のスピードは非常に速く、可能な限り自らの目で現地の事情をよく見極め、相手と直接かつ率直に対話し、ありのままの姿を知るという努力を怠らないことが重要です。また,今や年間延べ900万人を超える中国の人々が日本を訪れていますが,高い技術力・製品力,企業文化,地方の観光資源等,日本には更に開拓・発見されるべき魅力が無限に残されています。ありのままの姿を正確に知ることは、お互いに相手との関係を考える上での基礎をなすものであり、出発点でもあります。
 
   二つ目は、そうした等身大の相手を見つめることにより、自国の安定と繁栄にとって相手国が有する重要性、そして同時に、国際社会において日中関係が有する影響力を十分に認識すること、即ち二国間関係及び国際社会に対する責任感を一層強く共有すべきことです。日中両国とも、自国の持続的成長を考えた際に相手国との協力が不可欠であることは言を俟たず、また、両国が有する国力を考えれば世界の平和、安定及び繁栄にとって日中両国が負う責任は益々重大なものとなっています。「世界の中の日中関係」という視点であり、これはまた、様々な形で益々緊密化・複雑化の度合いを強める国際社会において、他国との関係や国際情勢を抜きにして日中関係を考えることが最早できないことをも意味しています。
 
   三つ目は、上述の二つの視点に立って今後の日中協力を考えた場合に、これを信頼関係に基づく長期安定的なものとしていくために必要となる、両国民間の「共感」の有無です。真に互恵的な協力を進めるためには、十分な相互理解と強い責任感の上に、心と心の通い合う関係を築いていくことが必要であり、そうした共感が現在日中両国民間に広範に存在しているかといえば、残念ながら未だなお十分とは言えないと思います。冒頭述べましたように政府間の対話は活発化してきていますが、これを継続・強化するとともに、国民交流を一層広範かつ緊密に進めていくことが極めて重要であり、両国各界が意識的な努力を続けていかなければならないと思います。
 
   今年2020年は「日中文化・スポーツ交流推進年」であり、その推進のための親善大使として、日本のアイドルグループ「嵐」が日本政府から親善大使として委嘱を受けていますし、東京オリンピック・パラリンピックの開幕もいよいよ迫ってきています。「苟(まこと)に日に新たに、日日に新たに、又日に新たなり」(苟日新、日日新、又日新《礼記・大学》)。令和の時代になって最初の新年を迎えるに当たり、心新たに、今年が「日中新時代」の幕開けにふさわしい一年となるよう、在上海日本国総領事館としてましても、全力で皆様と一緒に取り組んで参りたいと思います。本年もよろしくご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
 

 

 


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