磯俣総領事(大使)の挨拶(2019年秋:令和元年10月10日)

暑い夏も過ぎ去り、上海ではそこここで金木犀の香りも匂う季節になりました。実りの秋を迎える中で、総領事館では引き続き様々な日中協力・交流のイベントを進めていきたいと思います。やれること、やりたいことは沢山ありますが、紙面の関係上すべてを掲げることはできませんので、ここでは3つのことに触れたいと思います。
一つ目は、日本食、特に日本のお米のプロモーションです。中国語で「美好生活」とも言われる、質の高い生活を中国の人々が目指す中で、食文化はその大きな部分を占めています。総領事館が今年の夏に行った調査では、上海には今や約4,300店を超える日本食レストランがあります。2年前の調査結果(約3,300店)と比べると、1,000店以上も増加しています。高品質で安心・安全な食品を求める消費者心理と、中国で日々高まっていると言っても過言ではない日本への関心が、こうした数字にも現れていると思います。9月下旬には、総領事公邸に当地の中華・和食レストラン業界、輸入販売業者の方々等に集まっていただき、日本産米の特徴や美味しい調理の仕方の講義、日中双方の料理人が調理した日本産米の試食を含むイベントをJETROとともに行いました。年末から年始にかけて日本の新米が中国でも入手可能となるので、多くのレストランで使ってほしいと思いますし、また、来年の旧正月の際の親戚・友人・仕事の取引先等への贈り物としても購入してもらえればと思っています。
二つ目は、10月と11月の「日中交流集中月間」の実施です。当館を含め中国にある日本大使館及び各地の総領事館では昨年も同様のイベントを行いましたが、当館では今年もこれを行っています。当地では大小様々な多くの日中交流事業が日々行われていますが、10月と11月の2ヶ月間については、これらの事業をできる限り「集中月間」の事業と位置付け、それぞれの事業を更に盛り立てていきたいと思います。「集中月間」には、通常の総領事館後援名義の付与に比して、より簡便な基準と手続でご参加いただけますし、SNS等で当館の方からも事業の広報をお手伝いさせて頂きます。交流事業を企画・実施される団体や個人の方々におかれては、是非とも積極的に活用頂ければと思います。手続等は当館HPにて紹介しておりますが、ご質問があればご遠慮なく、当館広報文化部(sh.koubun@sh.mofa.go.jp)までご連絡ください。
三つ目は、観光交流の更なる促進です。10月9日から11日まで、上海の宝山港において、アジア太平洋地域で最大のクルーズ船旅行に関する会議「Seatrade Cruise Asia Pacific」が開催され、私も出席する機会を得ました。近年急速な発展を見た日中間のクルーズ旅行市場は、昨年2018年はやや縮小して年間旅行客が約202万人となり、今年もその傾向が続いています。しかし、欧米の旅行市場を見ても分かるとおり、クルーズ船旅行には尽きない魅力と需要があり、日中間では現在の過渡期を乗り切るべく船会社、旅行会社、ターミナル運営者等の一層の連携と調整が必要と思われます。また、例えば欧米の旅客に中国に飛行機で来てもらい、中国旅行を楽しんだ後にクルーズ船で日本に旅行するという「フライ&クルーズ」のモデルや、日本と中国の旅客がいずれか片道にクルーズ船旅行を取り入れて、往路又は帰路をゆったりと身体を休め又は楽しみながら移動するという旅行プランも考えられると思います。会議では、私の方からこうした提言も行いました。新たな視点も取り入れながら、日中両国間の国民交流を更に推進していきたいと思います。
日本は本年5月から新たに令和の時代に入りましたが、10月22日には即位礼正殿の儀が行われる予定で、新たな天皇陛下の御即位が公に宣明され、海外からの賓客も招いて改めて慶賀されます。中国もまた、10月1日に建国70周年を迎えました。6月の日中首脳会談で両国が手を携えて切り開いていくとの決意が表明された「日中新時代」に向けて、新たな時代にふさわしい協力をどんどん進めていきたく、今後とも皆様のご支援を賜りますようお願いいたします。