1.上海市の大気汚染の概況
○ 最近、中国国内では深刻な大気汚染が発生しており、上海市環境保護局の発表によれば、上海市においても1月23日から25日にかけて、及び、1月30日に、空気質量指数(AQI)が五級(重度汚染〈汚染のレベルについては参考1参照〉)とされる数値を記録するなど、深刻な状況が継続しています。
○ 現在、特に問題となっているのは「粒子状物質」です。微小粒子状物質(PM2.5:直径2.5ミクロン以下、PM10の4~7割程度を占める)の新たな環境基準(2012年2月制定)は、2016年1月から全国施行予定ですが、北京・天津・河北、長江デルタ、珠江デルタ等の重点地域、直轄市及び省都では2012年から前倒しで観測が実施されています。また、北京、上海の米国大使館、米国総領事館も独自に観測データを公表しています。
2.粒子状物質(PM10、PM2.5)の健康影響
○ 粒子状物質には、工場のばい煙、自動車の排気ガスなどの人為由来、黄砂、森林火災など自然由来のものがあります。また、粒子として排出される一次粒子とガス状物質が大気中で粒子化する二次生成粒子があります。
○ PM10(直径10ミクロン以下)、さらにはPM2.5(直径2.5ミクロン以下)と、粒子の直径が小さくなるほど、肺の奥、さらには血管へと侵入し易くなり、濃度上昇に従い、ぜんそく・気管支炎、肺や心臓の疾患による受診・入院数が増加、さらには肺がん・循環器系疾患による死亡リスクが増加します。
○ 高齢者や子供、肺・心臓に疾患のある方は、健康な成人と比べて大気汚染に対してより高いリスクを有します。
○ また、屋外で運動を行う際は、通常よりも速く深い呼吸を行うため、より多くの粒子が体内に吸収され、健康影響を及ぼすおそれがあります。
3.一般的な対応策
○ 大気汚染のリスクを減らすためには、①屋外での運動を汚染の多い日から汚染の少ない日へ変更する、②運動時間を減らす、③激しい運動から軽い運動へ変更する(例:ジョギングを散歩へ)、④汚染の激しい沿道での運動を避ける、⑤外出時にマスクを着用する、といった方法が考えられます。
○ また、屋外の汚染は屋内の空気の質にも影響するところ、屋内の空気の汚染削減にはフィルター、空気清浄機の使用が一定の効果を有するとされています。
(参考1)空気質量指数(AQI)について
AQI 数値 |
AQI 級別 |
AQI類別及び表示色 | 健康への影響 | 推奨措置 |
0-50 | 一級 | 優 | ・空気の質は満足のいくものであり、基本的に空気は汚染されていない | ・正常な活動が可能 |
51-100 | 二級 | 良 | ・空気の質はまあまあだが、ある種の汚染物質が異常に敏感なごく少数の人々の健康に若干の影響を与える | ・異常に敏感なごく少数の者は、屋外活動を減少すべき |
101-150 | 三級 | 軽度汚染 | ・汚染に敏感な者は、症状が若干強まり、健常者にも刺激症状があらわれる | ・子供、高齢者及び心臓病・呼吸系統に疾病を有する者は、長時間にわたる、激しい屋外運動を減少させるべき |
151-200 | 四級 | 中度汚染 | ・汚染に敏感な者の症状が更に悪化し、健常者の心臓、呼吸系統にも影響があり得る | ・子供、高齢者及び心臓病・呼吸系統に疾病を有する者は、長時間にわたる、激しい屋外運動を避け、それ以外の健常者も適度に屋外運動を減少させる |
201-300 | 五級 | 重度汚染 | ・心臓や肺に疾患のある場合は、大気汚染による影響が著しくひどくなり、運動耐性が低下する。健常者も広く症状があらわれる | ・子供、高齢者及び心臓病、肺病患者は、室内に留まり、屋外運動を中止し、それ以外の健常者も屋外運動を減少させるべき |
300超 | 六級 | 厳重汚染 | ・健常者の運動耐性が低下し、顕著に強烈な症状が現れ、心肺関連疾患罹患リスクが高まる | ・子供、高齢者及び病人は、屋内に留まり体力の消耗を避け、それ以外の健常者は屋外活動を避けるべき |
※上海市環境保護局上海市環境監測中心HP上の資料を当館にて仮訳
(http://www.semc.gov.cn/aqi/home/Detail.aspx?id=beff7b97-7d5a-4b27-8cd3-a31f2c9527a6)
(参考2)関連ホームページ
○ 上海市環境監測中心:
・上海市内で観測されたPM2.5、PM10の1時間値、過去24時間平均の汚染指数等を公表。
http://www.semc.gov.cn/aqi/home/Index.aspx (中国語)
http://www.semc.gov.cn/aqi/home/English.aspx (英語)
○ 在上海米国総領事館 :
・PM2.5の1時間値(米国総領事館敷地内〈准海中路〉)を公表
http://shanghai.usembassy-china.org.cn/airmonitor.html(英語)
○ 独立行政法人 産業技術総合研究所:
・PM2.5に関する説明
http://unit.aist.go.jp/emtech-ri/ci/e-keyword/PM2_5/pm2_5.html(日本語)