最近話題の 鳥インフルエンザ ですが、本来は鳥だけが感染するインフルエンザウィルスによる病気です。それが最近ではヒトの感染例もみられるようになり、 2003年12月以後だけで世界中で130名以上が感染し、その半数が亡くなっています。
鳥インフルエンザウィルスはA型インフルエンザウィルスに属し、ヒトに感染するウィルスに構造が似ています。数年から数十年という期間で、突然変異によって人に感染するウィルス・ 新型インフルエンザウィルス となり、全世界的な大流行を引き起こすことがあります。これはそれまで毎年流行を繰り返してきた従来のインフルエンザウィルスとは型が全く異なり、人類のほとんどが抗体 (免疫力)を持たず、1918年のスペイン風邪(本来はスペイン・インフルエンザ)、1957年のアジア風邪(アジア・インフルエンザ)、1968年の香港風邪(香港・インフルエンザ)の流行などのように、全世界で数百万から数千万人の犠牲者を出したことで知られます。近い内にこの突然変異が鳥インフルエンザウィルスに起こり新型インフルエンザが出現し、再び全世界的な大流行が起きるのでは、と恐れられています。
幸い 現時点ではヒトからヒトへ直接感染をする新型ウィルスは見付かっておらず 、ヒトへの感染はすべてトリからの感染です。これは感染したトリ自身が病原ウィルスを多数撒き散らしたり、糞便中に多数の病原ウィルスが排泄されるために起こるもので、感染者のほとんどは鳥を飼っている農夫など、 大量の病原ウィルスを浴びる機会の多い人達 でした。
今のところ鳥インフルエンザの感染予防には、死んだ野鳥などには触れず、トリを扱う鳥市場などへの出入りを止めるなど、トリと接触しないことが大事です。卵は、流水でよく洗って下さい。鳥インフルエンザウィルス自体は熱に弱いため、きちんと加熱調理された鳥肉・卵は安全で、これらから感染することはありません。
冬に向かい、従来の (ヒト)インフルエンザの流行シーズンを迎えます。3~7日間続く38℃以上の高熱・全身倦怠感・関節痛などの症状が出ますが、高齢者では肺炎を起こして死亡することもあります。また小児では、インフルエンザ脳症や脳炎になることもあります。これは死亡率が高く、治っても後遺症が残ることがあります。
(ヒト)インフルエンザの予防のために、昔ながらのうがい・手洗いを励行して人混みを避け、規則正しい生活を心掛けて体の抵抗力を弱めないようにしてください。さらに、(ヒト) インフルエンザワクチンの接種 も有効です。ワクチン接種を受けても(ヒト)インフルエンザに罹ってしまうことがありますが、その場合でも症状は軽く済むと言われています。また、インフルエンザ脳症や脳炎の予防にも効果があるのでは、とも言われています。
治療には、抗ウィルス薬の一つである「 タミフル 」も有効です (タミフル耐性ウィルスの心配はあります)。これは発病後48時間以内に服用しなければならず、妊婦や一歳未満の乳児への投与は安全性が確立されていないので、慎重に投与する必要があります。最近騒がれているように神経症状などの副作用の心配もありますが、先に述べた乳幼児の罹患者に見られる死亡率の高いインフルエンザ脳症・脳炎には有効と言われています。
タミフルは医師の診断・処方によって初めて服用できる医薬品です。耐性ウィルスが出現することもあるので、自分自身の判断での予防投与は慎んだ方が良いでしょう。