![]() |
3月22日,当館多目的ホールで,田中実・都留文科大学名誉教授による文学講演会を開催しました。平日の夜にも関わらず,主として日本語・日本文学に関心を持つ人が参加しました。田中教授は,近代以降の日本文学の流派の紹介から始め,村上春樹の作品の特徴,魯迅にまで話題の幅は広く,最終的には「文学とは何か」という深いテーマでお話しいただきました。
五感で取られる世界を現実と捉えるのが日本近代文学の主流である,いわゆるリアリズムでした。村上春樹文学とカフカ文学が同じくリアリズムを超える作風を持っていますが,それはリアリズムをベースとする日本近代文学の主流とは一線を画しています。これは村上春樹文学がパラレルワールドを書く主な原因となっています。
文学は,それを通して世界を解釈するものであると田中教授は言います。田中教授によると,魯迅が日本に留学して医学の道から文学の道へ進んだことも,文学を通してこそ国民の魂を救済することができる、文学を通して世界を変えることができると認識したからです。
田中教授はこのたび中国で翻訳出版されたばかりの「騎士団長殺し」にも言及されました。手ぶらで村上春樹の作品を読むだけではなく,その作品にふさわしい読み方でなければ、その作品の面白さを引き出すのが難しいです。
![]() |
田中教授は「こういう話をするのが好き」とおっしゃって,熱意を込めてお話いただきました。 実は魯迅を敬愛されている田中教授。「中国の人に魯迅の素晴らしさを話したい」「魯迅をもっと中国の人に読んでもらいたい」とお話ししていました。
![]() |
講演後の質疑応答の時間。質問したい人の手がたくさん挙がりました。中には,村上春樹とサブカルチャーとの関係についての深い質問もありました。田中教授は,どの質問にも丁寧に答えられていました。講演後の参加者との交流では,田中教授に話をしたい参加者が後を絶ちませんでしたが,田中教授は参加者の質問ひとつひとつに答えてくださいました。
![]() |
![]() |
まだまだお話ししたい様子だった田中教授。講演の中で,「時間がないので,この話の続きは次回」とおっしゃってくださいました。次回また上海に来られた時にお話の続きを聞かせてください!
お忙しい上海の滞在期間の中で,時間を作って講演してくださった田中教授,通訳をしてくださった李勇華先生,ありがとうございました。
当館はこれからも様々な分野で日本文化を紹介していきます!