1.防犯上の基本的な心構え
2.当地の生活で必要な法律知識
3.防犯のための具体的な注意事項
4.交通事情と事故対策
(1)「自分のことは自分で守る」 海外で直面する様々な危険から身を守り、安全な生活を送るためには自らの努力で安全な環境を確保することが何よりも大切です。 |
(2)「備えあれば憂いなし」(防犯対策等の再チェック) 日頃から住居、勤務先、通勤経路、外出先で起こりうる事件、事故発生の可能性を考え、自分が巻き込まれた場合にどう対処すればいいのかを考えておく必要があります。 |
(3)安全対策の3原則 海外での活動における安全対策として、「目立たない」、「行動を予知されない」、「用心を怠らない」 の3原則が重要です。 |
(4)住居の安全対策が最優先 生活の基盤である住居の安全が確保されなければ安心して活動できません。安全面も十分に考慮した住居選びを心がけ、入居後も労をいとわず安全の確保に努めましょう。 |
(5)当地におけるネットワークづくり 平素から近所、地域社会との良好な関係の構築が防犯対策上も重要です。特に在留邦人の方々における連絡網の確立、再点検は常時怠らないよう気を付けましょう。 |
(6)海外での安全確保は「旅券」と「保険」が必須アイテム 海外で事件、事故が発生した場合、身分事項の確認と医療手段の確保が最優先事項となります。 |
海外にいる間は旅券が何よりも大切であることを忘れてはなりません。また、当地の医療機関は、病人に支払能力があると確認できるまではたとえ病状が悪くても治療を行わず、病院の待合所に放置される所が多いようです。急病で収容されても相応の治療を受けられるよう、海外旅行傷害保険に加入しておく、家族や勤務先が代行して保険請求できるよう保険加入状況を明らかにしておく必要があります。
外国で生活するに当たり、滞在国の法律に関するある程度の知識が必要となります。「法律を知らなかった」というのは抗弁の根拠となりません。詳細な法律上の問題については弁護士事務所の手助けなども必要になるでしょうが、ここでは、余り知られていない当地の法律や当地での死亡や身柄拘束に関する条約の該当条文を抜粋して取りまとめました。但し、条文は便宜上作成した仮訳です。
なお、罰金については、基本的には公安を含む法執行機関が裁判を経ずに徴収できる罰金は概ね5,000元以下と規定されています(但し、持ち込もうとした物品の金額で罰金等が計算される密輸の場合等を除く)。犯罪を構成すると判断され、刑事手続に移行した場合には、判決で罰金の額が決まります。
ついては、中国政府係官から違反現場で言い渡された罰金の金額に疑問がある場合には法律上の根拠を必ず尋ねるよう心がけ、罰金を納付した旨が明らかになる書面を必ず入手するとともに、なおも取扱いに疑問がある場合には、遅滞なく上級機関に不服申し立てするか、当館までご連絡下さい。
(1)居留証・旅券の携帯義務(外国人入境出境管理法、同実施細則)
外国人が中国に在留する際は、中国政府の主管部門が発行した身分証或いは居留証を所持しなければならない(法第13条)。
中国に在留或いは短期滞在する16歳以上の外国人は必ず居留証或いは旅券を携帯し、外事警察官の検査に備えなければならない(細則第25条)。
(右違反に対しては)警告、500人民元以下の罰金を科すことができる。情状が重い場合、限期出境(期限付きで出国させる処罰)を併科する(細則第43条)。
(2)不法滞在(同上)
身分証書或いは居留証書の有効期限は、入国理由によって確定される(法第13条)。
D(定住)、Z(就業)、X(留学)、J-1(記者)の各査証(ビザ)を所持する外国人は、入国の日から30日以内に居住する市、県公安局で外国人居留証或いは外国人臨時居留証を申請しなければならない。
上述の居留証書の有効期間は即ち証書所持者の中国に滞在が許可された期限を指す。
外国人居留証は中国に1年以上滞在する者に発給する。
外国人臨時居留証は中国に1年未満滞在する者に発給する。
F(訪問)、L(旅行)、G(過境)、C(乗務)の各査証を所持する外国人は、査証に記載された期限の間中国に滞在でき、居留証書を取得する必要はない(法第16条)。
外国人が査証或いは居留証書に記載された有効期間が過ぎても中国に滞在し続ける場合には、期限が満了する前に延期を申請しなければならない。外国人が中国に滞在する期間中に実施細則第7条第4項に規定された疾病(精神病、ハンセン病、エイズ、性病、結核等の伝染病)に罹った場合には、中国の衛生主管機関は公安機関に期限満了前に出国させるよう具申できる(細則第20条)。
実施細則第16条、19条(査証免除規定を締結した国の場合)、20条の規定に違反して不法に滞在する外国人に対し、警告、不法滞在1日につき500元、総額で5000元を超えない罰金或いは3日以上10日以下の拘留を科すことができる。情状が重い場合は、限期出境を併科する(細則第42条)。
(3)不法就労(同上)
居留証書未取得の外国人、留学のため中国滞在中の外国人は、中国政府主管機関の許可を受けずに中国で就業してはならない(法第19条)。法第19条でいう中国政府主管機関とは中華人民共和国労働部を指す(細則第28条)。
中華人民共和国労働部或いは権限を与えられた部門の批准を受けずに就業した外国人に対し、在職或いは就業を中止させると同時に、1000元以下の罰金を科すことができる。情状が重い場合、限期出境を併科する。不法就労外国人を雇用した単位及び個人に対し、その雇用を中止させると同時に、5,000元以上50,000以下の罰金を科すことができ、併せて雇用していた外国人を送還させる費用全額を負担するよう命じることができる(細則第44条)。
(4)臨時宿泊先の登記(同上)
外国人が中国国内で臨時に宿泊先を定める際、規定に基づき宿泊登記をしなければならない(法第17条)。
外国人が賓館、飯店、旅店、招待所、学校等、企業、事業単位或いは機関、団体及びその他中国の機関内に宿泊する際、有効な旅券或いは居留証を提示し、臨時宿泊登記表を記入しなければならない。未開放地区での宿泊は旅行証を更に提示しなければならない(細則第29条)。
外国人が中国人の居宅に宿泊する際、都市部では到着後24時間以内に、宿泊先の家人或いは本人が宿泊者の旅券、居留証及び家人の戸口簿を持って公安機関に申告、臨時宿泊登記表を記入しなければならない。農村では72時間以内に現地の派出所或いは戸籍弁公室に申告しなければならない(細則第30条)。
警告或いは50元以上500元以下の罰金を科すことができる(細則第45条)。
(5)邦人の死亡に関する領事通報(領事関係に関するウィーン条約)
接受国(中国)の権限のある当局は、関係のある情報を入手した場合には、次の責務を有する。
(a)派遣国(日本)の国民が領事機関の領事管轄区域内(当館の場合、上海市、江蘇省、浙江省、安徽省)で死亡した場合には、その旨を遅滞なく当該領事機関に通報する(条約第37条)。
(6)邦人の身柄拘束に関する領事通報(領事関係に関するウィーン条約)
接受国(中国)の権限のある当局は、領事機関の領事管轄区域内で、派遣国(日本)の国民が逮捕された場合、留置された場合、裁判に付されるため勾留された場合又はその他の事由により拘束された場合において、当該国民の要請があるときは、その旨を遅滞なく当該領事機関に通報する。逮捕され、留置され、勾留され又は拘禁されている者から領事機関に宛てたいかなる通信も、接受国の権限のある当局により、遅滞なく送付される。当該当局は、その者がこの(b)の規定に基づき有する権利について遅滞なくその者に告げる(条約第36条第1項(b)号)。
(7)領事官の接見文通権(領事関係に関するウィーン条約)
領事官は、留置され、勾留され又は拘禁されている派遣国の国民を訪問し、当該国民と面談し及び文通し並びに当該国民のために弁護人を斡旋する権利を有する(条約第36条)。
(1)住居をめぐるトラブル
当地では、法令により外国人が居住できる住居、ホテル等は限られており、それ以外の施設に宿泊する場合には、必ず24時間以内に管轄の公安分局等で登録をしなければなりません。同様に外国人が居住できる住居等に中国人を宿泊させる際にも予め登記する必要があり、違反すると罰金等の処罰を科されることがあり、査証期限を短縮されて国外退去同様の処分が下されることもあります。
上海市内で留学生や中国人の方を配偶者とする方々の中で、この法令を知らずに中国人の居宅等に宿泊していて、公安局から罰金の納付を求められるというケースが大変多くなっています。
当地の公安当局では、外国人の管理と安全確保という観点から、こうした措置をより一層強化する傾向にありますので、長期滞在する邦人の方々は、当地の法令を熟知し、無用なトラブルを起こさぬように心がけてください。
また、毎年冬になるとガス器具使用中に一酸化炭素中毒で死亡するケースが散見されます。気密性の高い部屋で入浴中に排気が不完全なガス器具を使用していたことによって一酸化炭素中毒になるケースが多く、中には使用後しばらくして中毒になるケースもあります。ガス器具使用に当たっては、使用中及び使用後も換気に十分注意するとともに、ガス器具の点検を定期的に行うよう心がけてください。
(2)侵入窃盗犯の手口
当地における侵入窃盗犯(屋外から住居内に侵入して物を盗む泥棒)の手口は、日本の泥棒のように施錠されたドアや窓を予め準備した器具等でこじ開けるなど常習的で計画的ではなく、むしろ無施錠の出入口や外れやすい窓ガラスから侵入したり、窓ガラスをその場にある石等で打ち破ったりするといったかなり大胆かつ偶発的な犯行が多いように見受けられます。
4年前、南京市では、ドイツ人家族が4名の強盗に居宅内に侵入され、4名の家族全員が殺害され、金品が奪われる事件も発生しています。また、上海市内の邦人宅で夜間2階の無施錠の窓から泥棒が侵入し、書斎にあった金品が盗まれる事件や同じく2階の無施錠の窓から外国人の居宅に侵入した泥棒がその場にあった果物ナイフを使い、金を脅し取ろうとした強盗未遂事件が発生しています。
たとえセンサーを設置したり、警備員が周囲を巡回していたとしても、施錠していなければ、賊が侵入してくる可能性があります。一戸建て住宅ばかりでなく、マンションでも上からロープ等を使って降りてきて、無施錠の窓から侵入する泥棒が捕まったという報道もありました。夏でも窓を開けたまま就寝することのないようお気を付け下さい。
中には、警備員や施工業者等が後刻盗みに入るといった例や、同じマンションの隣の部屋と鍵がたまたま同じであったため、隣人男性に侵入された女性の被害例もあります。こうした業者を居宅の中に入れる時には始終立ち会い、動向に十分に注意すること、入居後に鍵を取りかえたり、二重ロックをすること、玄関や窓を開けたままにせず、常時こまめに施錠することなどを心がけることが防犯対策の第一歩です。防犯を他人任せにするのではなく、結局、自分だけが自分の身を守れるということを肝に命じる必要があります。
(3)違法両替の手口
当地では、定められた場所以外での両替は禁止されています。両替の闇レートがかなり有利だからといって、安易に多額の両替をした結果、偽札をつかまされたり、帰宅後に金額を確認したら、約束した金額より少なかったといったトラブルも後を絶ちません。こうした闇換金は、そもそも違法行為である上に、衆人環視の中で大金を見せるようなことが、スリ等の二次的な犯罪を生むことにもなりますので、絶対に止めましょう。
(4)暴力カラオケ店の手口
当地では、邦人男性が暴力カラオケ店やマッサージ店で法外な料金を請求されるという事件が散見されます。以前は邦人がビール1杯で20万円の支払いを強要されたというケースがありました。
被害者は旅行者、出張者が多く、ホテルや繁華街で中国人に片言の日本語で声を掛けられ、一緒に行った店で被害に遭っています。精算時に屈強な男が数人現れ、多額の料金を請求され、現金がないことを知るとクレジットカードを奪いとられ、後にカード会社に確認したところ10数回にわたって使用されていたというケースもあります。また、いずれも店に向かう際にタクシーに乗せられるため、被害場所が特定できないようですが、被害場所が特定できないと公安当局より被害証明の発給を拒否されることがあります。
また、クレジットカードのキャッシングで現金を払うように迫られ、暴行を加えられたあげく暗証番号を無理やり言わされるという事案も発生しています。この事案は当館とクレジットカード会社が協力して犯人を特定し、公安当局を通じて被害金額全額が返還されました。こうした被害を防ぐためには、甘い言葉での誘いに乗らないことが大事ですが、万一暴力カラオケ店で被害に遭ったら、とにかく一旦外に出て、直ちに店名、場所及び店員の人相服装等を公安に届け、当館にもご連絡下さい。
(5)脅迫事件の手口
当地では、邦人を対象とした脅迫事件も少なからず発生しております。
○ 出張中死亡した中国人社員の死亡保証金の増額を求めて会社事務所に遺族が押しかけ執務を妨害するとともに、総経理が事務室内に事実上監禁状態となった。
○ マンションの郵便受けに「お前を殺す。子供も殺す」と書かれた紙片が投函された。
○ ボーナスの増額を要求して会社事務所に従業員が大挙して押しかけたが、これに応じなかったため、暴行を加えられ、一晩中事務室内に監禁された上脅迫された。
○ 一方通行を逆行してきたバイクを車ではねてしまい、中国人を死亡させてしまったが、遺族より多額の賠償金を請求され、これに応じなかったところ、チンピラとともに現れ、脅迫された。
当館に持ち込まれる相談だけでも手口は様々です。中でも脅迫事件は民事事件と表裏一体である場合が多く、公安が刑事事件として取り合わないことに苛立ちを感ずる方も多いようです。刑事事件として処理してもらうには、犯人像、事案の経緯等を自分なりによく整理してから、通訳を介して警察官に正確かつ順序良く説明する必要があります。
(6)スリの手口
当地では、前述のとおり、子供連れの邦人女性や旅行客を対象としたスリ事件が横行しています。特に、観光名所やデパート等を中心に現金、貴金属及び旅券を狙って、数人のグループでスリを働く行うケースが増えています。こうしたグループは、見張り役、取り囲み役、財布を盗み取る役、盗んだ財布を受取って逃げる役等に分業されていることが多く、被害者は盗まれた後しばらく経ってから、財布がなくなっていることに気がつくことが多いようですが、仮にその場で気づいたとしても犯人を特定するのは難しくなっています。
スリは警戒心の薄そうな人を人込みの中から見つけた後、犯行に移りますから、彼らのターゲットにならないよう常に周囲に気を配りながら行動することが必要です。鞄のファスナーを開けて歩いたり、財布や旅券をむき出しにして人込みの中を持ち歩くような人は彼らの格好の餌食となります。犯人たちにとって、攻撃しやすい対象(ソフト・ターゲット)から攻撃しにくい対象(ハード・ターゲット)になるよう自分なりに工夫する必要があります。
(7)タクシー乗降時における注意事項
旅券をなくしたと当館に旅券の再発行を申請される方の中には、タクシーの乗降時に旅券を落としたり、車内に置き忘れたりするケースが最も多く見られます。どうしても料金の支払いに慌てて注意力が散漫になり、ポケットから財布を出し入れする際に旅券を落としたのに気づかないことも多いようです。降車時に領収書を受領しておけば、タクシー会社、乗車車両が特定でき、紛失物が戻って来る可能性が高くなりますので必ず受取るよう心がけて下さい。
また、タクシー降車後トランクから荷物をおろしている隙にスリに遭うケースも少なくないので、降りた後も周囲の状況をよく注意して、突然誰かにぶつかって来られても大丈夫なように、財布を入れてある場所を自分で押さえるなどして自衛策を講じて下さい。
以前、中国国内でタクシーに乗車した邦人ビジネスマンが狭い路地に連れ込まれ、10名位に囲まれ、拳銃などで脅かされ、現金を奪われるという事件が発生しています。この事件は、白タク(無免許タクシー)ではなく、空港のタクシー乗り場で乗車したにも拘わらず被害に遭っています。当地で発生した訳ではありませんが、この種の事件は、誰もが被害に遭う可能性があるといえます。
(8)ホテル利用時の注意事項
3年前の事件ですが、上海市内でも上海駅近くのホテルに宿泊していた邦人ビジネスマンが男2名、女1名の強盗に殺害され、金品を奪われるという凶悪事件が発生しています。当地公安当局によれば、この強盗グループは、犯人(女性)がまずホテルの室内電話を使い、宿泊客の在室を確認し、ホテル従業員に開錠させたり、マッサージするなどと誘うなどした後、犯人(男性)が侵入するという手口で、広東省東莞市、河北省保定市及び同省石家荘市でも同様の犯行を繰り返していたようです。
また、出張中の日本人男性が就寝中、ホテルの部屋に押し入られ、旅券入りの鞄を盗まれたり、金品の被害はなかったものの、部屋の中に押し入られ、いきなり殴られ一時意識を失ったという事件も発生しています。
以前、中国国内で邦人ビジネスマンが外資系ホテルのスイート・ルームに宿泊中、金品を盗まれる事件が発生しました(被害者は3部屋ある部屋の寝室で寝ていたため、犯人が入ったことには気付かなかった)。犯人は、ホテルの外側から窓ガラスを切り、針金で鍵を開け、ホテルの屋根裏に侵入した後、屋根裏づたいに目的の部屋まで行き、部屋に侵入したということです。
こうしたホテルを舞台にした犯罪を防ぐには、
① 当地の治安情勢や犯罪傾向に注意する
② 安全性を最優先させてホテルを選ぶ
③ 目前の危険は自分でしか守れない
という3点が重要です。特に第3番目については、ドアを開ける際に誰が来たかを確認する、賊と対峙した際には抵抗しないなど、その場に応じた対応が必要であり、目前の危険を回避するのは自分しかいないということはどうか忘れないで下さい。
(9)労使関係をめぐるトラブル
社内で不正を働いた社員を解雇した際に逆恨みされ、暴行を受けたり、脅迫されたりするといった労使関係をめぐるトラブルに起因する事件は依然跡を絶ちません。
また、会社の運営一切を任せていた中国人幹部社員が密かに運転資金を持ち逃げしたり、私的な目的のために流用したり、工場を時間外操業させて別会社名義の利益を上げたりする事案も多く起こっています。
前者については、当地の法令や雇用契約を厳格に適用して、相手の要求に対し、どれだけ毅然とした態度で対応するかが事態収拾の鍵となります。事態の長期化や複雑化を懸念して、安易に妥協案を提示したり、雇用契約に矛盾する条件を示すことは、残された工員たちに動揺が広がり、相手方からも足元を見られる結果となるなど、得策と言えない場合が多いようです。
これまでの事例では、市、開発区や郷鎮といった政府関係当局と良好な関係を保ちつつ、中国人の幹部・一般社員からの信頼を得ながら、条理にかなった対処を行った企業については、一時的には危機的な状況に陥っても、最終的には事態を収拾できているようです。
当館では、こうしたトラブルで相談を受けた場合、必要に応じて政府当局に対する書面若しくは口頭で円満な解決に向けて働きかけを行うとともに、当地の法律専門家を紹介するなどして対処しています。特に、日本人経営者が現地で逮捕監禁されるような状況では、24時間体制で公安当局等に対する保護要請や現地への館員派遣等の援護措置を講じています。
(10)誘拐事件、企業テロ対策
当地では、幸いにして日系企業を対象としたテロ事件や邦人を対象とした誘拐事件は発生しておりませんが、こうした事件に遭遇しないように努め、発生した場合にどう対処すれば良いかについて予め心の準備をしておく必要があります。一般的には、「他人に自分の行動を知らせない」、「出退社は同じ道を通らず、時間帯を変える」、「他人に尾行されていないか常に気を付ける」といった注意事項がよく使われますが、一番大事なことは常に自分の周囲の変化に注意を払うことにあります。
自分又は自分の企業・学校がテロ等の対象になりうるかを考えておく必要があります。犯行には全く無差別に敢行されるものと予め狙いを定めてくるものとがありますが、どちらの場合でも何らかの「兆し」があることが多いものです。このわずかな変化が感じ取れるように平素の生活からより注意深く、自分の生活を冷静に見ることができるよう努めることが肝要です。
実際に予兆があった場合には、直ちに総領事館や公安当局へ通報するとともに、周囲の点検、警備、避難等の対策を速やかに取らなければなりません。事案が発生した場合には、生命身体の安全確保を最優先するとの観点から、総領事館や公安当局と秘密裏に協議をして最善の策を模索していかなければなりません。
(1)上海市内の交通事情
上海市公安局は2002年の上海市内の交通事情について次のように公表しています。
(イ) 2002年、上海市内で1,398名が交通事故により死亡しており、一昨年と比べて106名、7.1%減少している。
(ロ) 負傷者については15,585名であり、一昨年と比べて166名、1.1%減少している。
(ハ) 2002年中の交通事故による直接の経済損失は29,754.2万人民元となっている。
(ニ) 小中学生が関係する事故は179件、死者12名で、一昨年同期比でそれぞれ10.5%、25%減少している。
(ホ) 60歳以上の老人が関係する事故は854件、死者189名で、一昨年同期比でそれぞれ2.2%、3.1%減少している。 参考:2002年の日本の各都道府県における交通事故死者数
多い順:①北海道493、名神奈川376名、②愛知398名、③千葉379名、④神奈川376名、④東京376名、⑥埼玉343名
少ない順:①沖縄61名、②高知63名、③長崎66名、④徳島69名、⑤大分70名
(2)事故対策
車の右側通行、車両の常時右折可など、日本と交通規則が異なる上、車の信号無視、歩行者や自転車が所構わず道路を横断してくること、整備不良車両の運行、高架道路での速度超過や無理な追い越し等交通マナーが大変悪いため、いつ事交通事故に巻き込まれてもおかしくない状況と言えます。歩行中や横断中は左右後方から近づいてくる車両に十分気を付けると同時に、タクシー等の運転手等にも速度や車間距離等に注意を促すなどして、交通事故防止に努める必要があります。
特に、近年は、江蘇省連雲港市や安徽省合肥市から南京市、南京市から上海市に向かう高速道路の路線バスで運転手の居眠りや前方不注意等により横転、追突等の事故が発生し、乗車していた邦人が重傷を負う事故が発生しています。長距離高速路線バスは、睡眠不足等で注意力が散漫な状態で運転している運転手が多く、乗客も殆どが睡眠中であることも多いため、大事故に繋がり易いことから、利用には十分な注意が必要です。夜間の利用は極力避け、できるだけ車窓を眺めるなど咄嗟の事故にも対応できるよう心がけ、特に、最前列の席はそのまま身体が前方ガラスに投げ出される可能性がありますので、できる限り座らないような注意も必要かと思われます。