1. 中国における狂犬病の状況
先般、北京在住の日本人が青空市場で子犬を購入しましたが、その子犬が狂犬病で死亡した、という事例がありました。幸い、飼い主には感染しませんでしたが、中国衛生部より発表された「2004年の中国における法定伝染病の発症者、死亡者数」によると、死亡者の第1位は狂犬病、第2位は肺結核、第3位は肝炎となっており、このうち狂犬病による死亡者は2,651人で、法定伝染病死亡者の37%を占めています。
2. 狂犬病について
(1) 感染源
狂犬病は、日本では撲滅された感染症ですが、オーストラリアを除く世界の大陸で感染者がでています。狂「犬」病という名称ですが、犬に限らず、猫やイタチ等他の哺乳動物からも感染することがあります。狂犬病に感染した犬等の動物から咬まれることで、その傷口からウイルスが体内に侵入します。
(2) 症状
ヒトの場合、潜伏期間は9日~数年(通常20~60日程度)で、発病率は32~64%(発病するかどうかは咬まれた傷口の大きさや体内に入ったウイルスの量などで大きく変わってきます)で、発病した場合は100%死亡します。症状は発熱、頭痛、嘔吐などに始まり、次いで筋肉の緊張、けいれん、幻覚があらわれます。犬の遠吠えのようなうなり声をあげ、よだれを大量に流し、昏睡、呼吸麻痺が起き、死に至ります。
(3) 予防方法
日本では狂犬病が撲滅されているため、その危険性を忘れがちですが、中国では現在も感染者が存在する病気です。中国へ渡航、滞在される方は以下の点にご留意下さい。
(イ) 野生動物等にむやみに手を出さない。
日本人は犬や猫を見ると無防備に手を出したり、撫でたり、手から直接餌をあげたりしますが、むやみに犬や猫、その他の野生動物に手を出さないようにして下さい。
(ロ) 具合の悪そうな動物には近づかない。
(ハ) 青空市場等での犬や猫等のペットの購入は避ける。また、他の感染症に感染するリスクがあるので、鳥やネズミなどの動物の購入も避ける。
(ニ) 予防接種(暴露前接種)
渡航、滞在先で動物を対象に活動する場合や付近に医療機関がない地域に滞在する場合、事前に狂犬病ワクチンを接種することをおすすめします。狂犬病ワクチンは初回接種後、30日目、6~12ヶ月後の計3回接種します。予防接種は日本国内の医療機関及び各検疫所等で受けることができます。
3. 万一犬猫等に咬まれた場合の対策
狂犬病にかかっているおそれのある動物に咬まれてしまった場合、まず、十分に水洗いをして(傷口を口で吸い出したりしない)、できる限り早く医療機関で傷口を治療し、ワクチン接種をします。発病前であれば、ワクチンの接種は効果があると考えられていますので、必ず接種しましょう。
北京では、在留邦人の方の利用が多い医療機関であれば、概ねワクチンの接種が可能です。地方では、省、市、県レベルで設置されている「疾病予防控制中心(日本における保健所に相当する機関)」で概ね接種できます。中国の主要都市の医療機関については、外務省ホームページ(トップ>渡航関連情報>世界の医療事情
アドレス: http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/medi/index.html)にも掲載していますのでご覧下さい。
その他、在中国日本国大使館のホームページにおいて、中国における関連情報サイト、中国における最近の狂犬病発生事例などについてご紹介していますのでご覧下さい。
(大使館ホームページのアドレス: http://www.cn.emb-japan.go.jp/ )
(問い合わせ先)
○ 外務省領事局政策課(医療情報)
住所: 東京都千代田区霞が関2-2-1
電話: (代表)03-3580-3311(内線)2850
○ 外務省海外安全相談センター(国別安全情報等)
住所: 東京都千代田区霞が関2-2-1
電話: (代表)03-3580-3311(内線)2902
○ 外務省 海外安全ホームページ: http://www.mofa.go.jp/anzen/
○ 在中華人民共和国日本国大使館
住所: 7 Ri Tan Road, Jian Guo Men Wai, Beijing, People's Republic of China
(北京市建国門外日壇路7号)
電話: (86-10) 6532-2361
FAX: (86-10) 6532-4625
狂犬病に関する外務省渡航情報
平成17年3月16日
在上海日本国総領事館
在上海日本国総領事館